「和室」と聞いてイメージするときにほとんどの人が障子や襖の建具がある畳の敷いてある空間を思い浮かべると思います。畳のない和室の方が想像しにくいと思います。そんな日本の住まいとは切っても切り離せない畳についてのお話です。

畳は伝統的な床材の一つで前回紹介した和紙とは違い、他の国から伝来したものではなく、日本固有のものです。初期の畳には現在のような厚みはなく、莚(ムシロ)・ござ・コモなどの薄い敷物の総称でした。「たたみ」の語源は使わないときにたたんですみに置いておく「たたむ」が名詞になって「タタミ」と言われるようになったとされています。

現代の畳のように厚みが出てくるのは平安時代に入ってからです。板張りの部屋のなかで人が座る場所のみに畳を敷いて使っていました。現代の和室同様部屋全体に敷き詰めて使われるようになったのは室町時代の書院造りの頃からと言われています。畳は権力者・高貴な者たちのための物でしたが、数寄屋造という建物の様式や茶道の発展によって広まっていきます。江戸中期以降になると庶民の家でも畳を使用することが許されるようになりました。

現在は住宅の洋風化に伴って和室がない家も珍しくなくなっており、畳のない家もあります。しかし部屋全体に畳を敷くのではなく、平安時代に使われていたように板間に数枚引いて使うという平安スタイルが復活しつつあります。通販などでは置き畳と検索するとフローリングに置くように対応された滑り止め付きの畳が出てきます。

そんな身近な素材の畳ですがお手入れの方法がよく分からないって方も多いようですのでご紹介します。(私も知りませんでした汗)

まず、普段のお手入れとしてはイグサの目に沿ってゆっくり掃除機をかけていきます。雑巾で拭く際も原則乾拭きで行います。濡れた雑巾を使うと畳本来の光沢がなくなってしまったり、黒ずみが発生することがあるので注意が必要です。汚れが取れない場合は固く絞った雑巾で汚れた部分のみをふいていきます。

さらに大切なお手入れとして畳干しがあります。春と秋の年に2回は畳を干してあげましょう。よく晴れた日に畳の裏面を日光に当てて4~5時間ほど干してほこりを叩いて出していきます。おもて面を日に当てると畳が日焼けしてしまうので注意が必要です。また、部屋のどの場所にあった畳なのかわからなくならないように印をつけると元に戻す際に作業がスムーズに行えます。畳を干すためのスペースがない場合でも畳の下に空き缶などを置いて風通しを良くするだけでも大丈夫です。

畳の大敵「カビ」を予防して気持ち良く使っていくためには適度な換気も大切です。梅雨の時期など湿度の高い時期には除湿機などを使うのも効果的です。

なんとも手のかかる畳ですが日本の伝統的な文化が身近に感じられ、イグサの香りでほっと落ち着ける素敵な素材です。

 

白坂