所在地:埼玉県北本市
主要用途:住宅
工事内容:新築
敷地面積:304.87㎡
建築面積:77.68㎡
延床面積:115.68㎡
構造/工法:木造軸組工法
規模:地上2階
竣工:2017年9月
欅組のつくる住宅で、最もスタンダードな木の家が完成しました。建築コストを抑えながらも木の家の良さをを失わずに、良い意味でシンプルに削ぎ落としが出来た住宅となりました。
家づくりの研究が数年前から始まり、土地探しの段階からご一緒させていただきました。欅組の家づくりは出来上がった家を買っていただくのではなく、お客様の歩調に合わせて一緒につくり上げていくスタイルです。今回は材木選定の為に設計の段階で山や材木店に同行し、使用する材料を選んだり、加工工場を見学するなど、施工に入る前から工事内容を確認しながら進めていきました。また、施工段階ではご近所の皆さまへの挨拶や今後の関係を円滑にしていく事を考えて、地鎮祭や上棟式(餅投げ)など昔から日本人が大切にしてきた祭事もしっかりと行いました。
施工段階では、外壁に使用した300枚以上の杉の焼板をお客様を中心に数ヶ月掛けて焼くプロジェクトも無事完了しました。焼板は、昔から耐候性を高める手法として用いられてきました。表面を炭化させる事によって、紫外線や風雨からの劣化を遅らせる事ができます。手間を掛けて焼いた分、塗り替えなどのメンテナンスもする必要が無いため、非常に費用対効果の高い外壁仕上だと思っています。欅組の最もスタンダードな外壁材の一つでもあります。
間取りはいたってシンプルです。大黒柱を中心とした田の字型プランで8畳の区画毎に部屋が構成されています。8畳の区画は最も材料の無駄がなく、かつ日本人が使いやすい部屋の広さでもあります。1階は玄関と水回り以外はほぼワンルーム型のリビングダイニングゾーンと6畳の和室が続き間としてつながっています。一方全室屋根まで吹抜けの2階は主寝室だけが個室として独立しており、子供室はいずれ一部屋にしたり大部屋になってもいいように、簡易的な間仕切りによって区画をしています。ロフトも後から好きな位置に設置します。家は成長するものです。というよりも中に住む人が成長する過程で、家もその成長についていかなければなりません。最初からあまりに決めつけた構成でつくり込んでしまうと、次の工事が大掛かりなものになってしまいます。
欅組の家づくりは「つくり込まない!」のが基本です。必要最低限のものだけを用意し、その都度必要になったものを付加したり除去していくという考え方です。そして元々日本の家がそうであるように、後のメンテナンスやリフォームがしやすい造りを徹底しています。
全体的にアナログな構成となっていますが、唯一ハイテクな要素が床下基礎暖房です。床下空間を効率の良いヒートポンプ型の暖房機で暖め、基礎のコンクリートに熱を蓄熱させます。ゆっくりと足元から暖め、高温にならない事で、無垢の材料の急激な乾燥も軽減され、室温も人間にとって快適な温度に保つことが出来ます。夏よりも冬場に弱かった木の家の弱点を克服する温熱設備計画です。
この住宅では、限られた予算の中でうまく配分を行い、優先順位を明確にしたメリハリのある仕様を実現することができました。お客様も積極的に家づくりに参加し、愛着のある住まいになった事と思います。